用語解説


>> P.226

二つの物体が接触しながら相対的に運動すれば、そこには必ず摩擦があります。静止している物体を動かそうとするときに働く摩擦を静止摩擦といい、運動中の物体に働く摩擦を動摩擦といいます。摩擦は私たちの生活で広く利用されています。例えばロボットでは電源OFF時にロボットの姿勢を保持するのにモータ内蔵のブレーキ(ディスク面の摩擦を利用)を用いたり、ボルトの締め付けも摩擦を利用しています。しかし他方で摩擦はエネルギーの損失となるため、太古より摩擦を減らすいろいろな方法が経験的に発達してきました。重量物を運搬するのにコロを用いたり、車軸の摩擦と磨耗を減少させるために油脂の潤滑剤を用いたりしたことは、きわめて古い記録に残っています。この摩擦現象をはじめて科学的に研究したのは、イタリアの科学者でかの有名なLEONARDODAVINCI(1452∼1519)です。彼は摩擦の第一法則、第二法則と現在名付けられている次の二つの基本法則を見出し、多くの実験を行ってこれを確かめています。1)摩擦抵抗は接触面に加えられる垂直荷重に比例する。2)摩擦抵抗は滑り面の見かけの面積に無関係である。その後1781年にフランスの科学者C.A.COULOMBもこれらの法則を確かめており、さらに彼は摩擦を静止摩擦と動摩擦に明確に区別し、動摩擦は明らかに静止摩擦より小さいこと、および摩擦の第三法則と呼ばれる次のことを見出しています。3)運動摩擦の抵抗は、滑り速度に無関係である。次に摩擦の起こるメカニズムについてお話しします。さきほどの科学者C.A.COULOMB以来、摩擦のメカニズムについて二つの説が対立してきました。一つは、摩擦は接触面の凹凸のかみ合いによって生じ、その大きさは荷重をその凹凸の山の高さまで持ち上げるための仕事によって決まるという説で、いわゆる凹凸説です。もう一方は、接触面の一部には荷重のために両面が分子間隔程度にまで近付いて凝着した部分が生じ、その凝着部をせん断するための力が摩擦抵抗になるという凝着説です。18世紀にはC.A.COULOMBの称えた凹凸説で摩擦現象が一応は説明されてきたのですが、今世紀に入ってから次第に凝着説が主流を占めるようになり、現在ではさまざまな科学者の研究により凝着説がほぼ真実に近いものとして認められるようになりました。日常、さまざまな場面で良くも悪しくも何気なくつき合っている摩擦も、調べてみると奥の深いものですね。(1997年10月号)摩擦226226


<< | < | > | >>