用語解説


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TMCPとはTHERMOMECHANICALCONTROLPROCESSの頭文字をとった新しい鋼製造技術の略称であり、狭義には制御圧延と制御冷却を併用した製造技術をいいます。そしてそれらを適用して製造される鋼を一般にTMCP鋼と呼んでいるわけです。TMCPはスラブ加熱に始まる鋼の熱間圧延、冷却過程を、単に成形プロセスとしてではなく、加工熱処理プロセス、すなわち鋼の高強度化、高靱化のプロセスとして有効に活用した製造技術といえます。制御圧延後の冷却方法により、非水冷型と水冷型に大別されますが、最近開発、実用化された加速冷却型とも呼ばれる水冷型がTMCPの主流となっています。図1は従来の普通圧延と加速冷却型TMCPの製造熱履歴の比較を示したものです。普通圧延は所定の寸法に鋼板を成形することを目的としたものであり、圧延条件が冶金的見地から制約されることはありません。従って、この製造法では成形性や圧延能率の点で有利な高温域での圧延が行われ、強度、靱性は合金元素の添加、不純物の低減、焼きならしなどの熱処理によって確保されます。いっぽう、TMCP鋼は、低いスラブ加熱温度、温度調整を行う多段圧延、低い圧延仕上がり温度、圧延後変態域を通ずる水冷で特徴づけられるもので、制御圧延、制御冷却による結晶粒の微細化により、同一強度レベルの従来鋼に比較して、炭素当量(CEQ)の低減が可能となり、また、従来オフラインの熱処理で行われていた高強度化、高靱化をオンラインにおいて実現することが可能となっています。TMCP鋼は造船用HT―50鋼にいち早く採用され、すでに実用化段階に入っていますが、これは炭素当量CEQを低減でき、耐溶接割れ性や大入熱溶接継手のHAZ靱性を改善することができるなどの特徴によるものです。図2はCEQ.と引張強さの関係を普通圧延法とTMCP鋼の場合について示したものですが、これより、HT―50鋼の場合、0.05∼0.10%のCEQ.の低減が可能なことがわかります。CEQ.の低減により、予熱の省略、一層すみ肉溶接への非低水素系溶接棒の適用が可能となり、溶接能率の向上という面で大きなメリットとなっています。大入熱溶接に対するHAZ靱性の向上も特徴のひとつですが、大入熱溶接にあたっては、溶接材料の選択にも留意が必要です。TMCP鋼はCEQ.が低いため、母材希釈率の大きい片面一層溶接などを従来の溶接材料で行った組合、溶接金属において、所要の強度や靱性が得られないことがあります。このため、TMCP鋼の特性を考慮した新しい溶接材料が開発され、実用化されています。さて、TMCP鋼がその特性向上に対して、最も効果的なのは低温用HT―50鋼の分野といわれています。実際、LPGタンカー、氷海船、海洋構造物などに実績があり、今後ともその適用は拡大されていくものと考えられます。(1986年4月号)TMCP鋼200200


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