用語解説


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図1 斜めY開先割れ試験(現在ではY形溶接割れ試験と表現される) 45,000∼33,000N/MM・MM高張力鋼は軟鋼に較べて強度が高いことから、鋼材使用量が少なくて済み、また溶接工数も短縮できるなどのメリットがあり多くの構造物で使用されています。しかし鋼中にニッケル(NI),クロム(CR),モリブデン(MO),銅(CU),バナジウム(V),ニオブ(NB)等の合金元素を含んでいるため、溶接の際の熱影響で非常に硬い組織ができやすく、そのため熱影響部の延性が低下して低温割れを発生しやすいという問題があり、施工には十分な注意が必要です。低温割れは溶接後、ある時間を経過したのちに発生する割れで、ビード下割れ、ルート割れ、止端割れなどが含まれますが、これら低温割れは次に示す①∼③を原因としています。①溶接熱影響部の延性②溶接金属の拡散性水素量③拘束度これらのうち①は鋼材の化学成分、②は溶接材料の持つ水分、③は構造物の設計に大きく依存するわけですが、鋼材メーカーでは高張力鋼板の開発過程において耐溶接割れ性に優れたものを作るために鋼材の化学成分と低温割れ感受性との関係を把握する必要がありました。そこで種々の化学成分の鋼について図1に示す試験片を作り、②と③を一定にして鋼板の組成と割れ率の関係を調べた結果、見い出されたのが「PCM」即ち「溶接割れ感受性組成」です。PCM=C+SI──30+MN──20+CU──20+NI──60+CR──20+MO──15+V──10+5B(%)………PCMは低温割れに及ぼす鋼材の化学成分の影響を定量的に評価したもので、数値の低いものほど溶接割れ感受性が小さく、溶接施工時に予熱温度を下げることができます。また、この試験において上記の要因②と③を変化させて、これらと割れ率の関係が調べられ、低温割れに及ぼす①∼③の要因の影響を定量的に表わすパラメータPCおよびPWが得られています。PC=PCM+H──60+T──600……………PW=PCM+H──60+RF────40×104………PC,PW:溶接割れ感受性指数H:JISZ3113による溶接金属の拡散性水素量(ML/100G)(グリセリン法)T:鋼板厚さ(㎜)RF:継手の拘束度(N/㎜・㎜)PCとPWの違いは、溶接割れ感受性指数を構造物に適用するために板厚の項を拘束力に置き換えている点です。現在、PCとPCMはWES―3001規格に取り上げられ、選択規格として調質高張力鋼板のPCMを規定しており、一方PWは、PCM,拡散性水素量、継手の拘束度が既知の場合の予熱温度を推定するのに用いられております。PCと予熱温度との関係を図2にPWと割れ発生限界冷却時間との関係を図3に示します。図2および図3は焼入れ焼もどし(調質)処理した高張力鋼についての結果ですが、PC,PWにより割れ発生限界が明確に示されています。しかし、これらの図を参考に一般の溶接施工する場合には継手形状、溶接入熱、溶接棒の乾燥温度により低温割れ発生限界は変化するので、溶接諸条件を十分配慮する必要があります。(1981年4月号)PCM194194


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