用語解説


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鋼材あるいは溶接部の切欠じん性試験の一種としてよく行われている落重試験から、NDT温度(無延性遷移温度、NIL―DUCTILITYTRANSITIONTEMPERATURE)が求められることは、ご存知の方も多いと思います。この落重試験(DROPWEIGHTTEST)は、米国で始められた方法でNRL落重試験ともいい、米国海軍技術研究所(NAVALRESEARCHLABORATORY)で開発されたクラック・スタータ爆破試験(図1参照)から規定されているNDT温度を正確かつ簡単に求めるために考案されました。NDT温度というのは、試験片が爆発力によりその温度以下ではほとんどふくらみなしにいくつかの細片となってばらばらに破断するが、その温度以上ではふくらみ変形が認められるという温度です。すなわち、図2に示すように試験板表面に硬くてもろいビード(CRACK―STARTERWELD)を置き、それに切欠きをつけて反対側に重錘を落下させてぜい性亀裂を発生させます。そしてぜい性破断が起こるか起こらないかの限界温度をNDT温度と呼びます。実際には試験温度を5℃の整数倍で変化させ、破断、非破断の温度差が5℃以内になるまで繰返して行います。そしてNDT温度の決定は“試験片が破断した最高温度であって、かつその温度より5℃高温の試験では2個以上の試験片がすべて非破断であるときの温度”ということになります。実際構造物の使用条件を考慮すると、使用する材料のNDT温度が構造物の最低使用温度より低ければぜい性破壊の危険性がないと考えられますので、構造用鋼のNDT温度が重要な意味をもつことになります。なお、構造物のぜい性破壊の機構は、その発生と伝播に分けて考えるべきであることが知られており、前者は延性破壊する材料がいかなる条件の下でぜい性破壊を示すかという問題であり、後者は発生した亀裂がいかなる条件の下で伝播を開始し、伝播し続けるかという問題となります。すなわち、溶接部には応力が残留しやすく、また溶接欠陥を起点とするぜい性破壊が発生する可能性があり、さらに溶接熱影響部は硬く、もろいので破壊発生源となりやすく、その伝播に対する抵抗力も小さい。このようなことから溶接構造用材料には良好な切欠じん性(破壊じん性とも表現される。)がとくに要求されます。そのため、切欠じん性を調べる試験法としては、工業的小型試験法である衝撃試験(Vシャルピー試験、落重試験)、COD試験(現在ではCTOD試験と表現される)、WOL試験等が別途あり、その他大型試験としてはディープノッチ試験、二重引張試験およびESSO試験が広く用いられています。〈参考文献〉溶接棒各論:㈱神戸製鋼所、1964年JEAC4202:フェライト鋼の落重試験方法、1970年JEAC4206:原子力発電所用機器の最低使用温度の確認試験方法(案)、昭和52池田一夫:切欠じん性の規格値とその根拠(1980年1月号)NDT温度(TNDT)193


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