用語解説


>> P.160

溶接材料の選定にあたっては、溶着金属の性能・溶接作業性などとともに能率性も選定のポイントの一つに挙げられます。溶着速度(DEPOSITIONRATE)は、溶接材料の能率性を表す特性の一つで、単位時間(普通、1分または1時間)当たりの正味得られる溶着金属の質量をいいます。例えば、溶接する継手の長さと開先の断面積から必要な溶着金属の質量を算出し、溶着速度で割れば、継手を溶接するのに要する時間が分かりますので、溶着速度は、溶着コストの計算には欠かせないデータの一つといえます。溶着速度は、溶接フラックスや溶接棒の被覆剤ではその種類、溶接ワイヤでは突出し長さ、また使用電流の種類・極性などによっても複雑に変わりますが、電流密度によって大きく変化します。一般には、電流密度が高くなるほど溶着速度はより大きくなります。電流密度は、溶接電流を電流の流れる箇所の面積で割った値ですから、同じ溶接電流で使う場合、細径ワイヤほど電流密度は高いので、溶着速度も大きな値を示します。一例を図に示します。例えば、1.2㎜Φ径のフラックス入りワイヤでは、ワイヤ断面積は一定ですから、溶接電流が高くなると当然電流密度も高くなり、溶着速度は大きくなっていますが、電流値が高くなるにつれ、溶着速度の上がり方は大きくなっているのが分かります。ワイヤと被覆アーク溶接棒では確かに径の小さいものほど溶着速度が大きい値を示しておりますが、同じ径のフラックス入りワイヤとソリッドワイヤを比べるとフラックス入りワイヤの方が大きな溶着速度を示すのはなぜでしょうか?これは、実は同じワイヤ径でも、フラックス入りワイヤはフラックスが入っている部分だけソリッドワイヤに比べ断面積が小さくなっており、実際の電流密度が高くなっているためです。フラックス入りワイヤが、最近その適用範囲を広げてきた理由の一つに、この高能率性を挙げることができます。さて、溶着速度とともによく使われる用語に、溶着効率(溶着率ともいう)(DEPOSITIONEFFICIENCY)がありますが、溶着効率は使った溶接材料の質量に対する、得られた溶着金属の質量の比〔(得られた溶着金属の質量)/(使った溶接材料の質量)〕をいい、百分率で表すこともあります〔溶接棒の場合は、使い残し(残棒)は除いて計算します〕。溶着効率(溶着率)は、溶接材料の“歩留まり”を表すもので、この値もまた溶接コスト計算などに必要なデータの一つです。溶着速度と紛らわしい用語に「溶融速度(MELTINGRATEまたはBURNOFFRATE)」がありますが、溶融速度は、単位時間に溶融する溶接棒や溶接ワイヤの長さをいいます。(1988年4月号)溶着速度160160


<< | < | > | >>