用語解説


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脆化前脆化後脆化量図1 焼戻し脆化過程前後のシャルピー衝撃曲線の例一般に、焼入れした鋼は、焼戻しを行うことにより、靭性が向上します。しかし、焼戻しの際、約380∼580℃の間を徐冷するか、この温度域に保持すると、急冷したものと比較して靭性が大きく低下することがあります。これを焼戻し脆化と言います。脆化の発生機構としては、P,SB,SN,ASなどの不純物が焼戻しの際に旧オーステナイト粒界に沿って偏析し、粒界の結合力を弱め、衝撃力によって粒界で脆性破壊を起こす、とする説が有力です。焼戻し脆化を防止するには、①600℃以上から急冷する。②Pの粒界偏析速度を小さくするMOを添加する。③不純物をできるだけ低減する。④不純物の粒界偏析を促進するSIやMNを低減する。などの方法があります。ところで、CR―MO鋼を用いた石油化学反応用の圧力容器では、その操業温度が上述の脆化温度域にあるため、操業中の焼戻し脆化を考慮する必要があります。この場合の焼戻し脆化の特徴としては、①硬さや引張特性には現れず、脆化過程前後の衝撃試験の遷移温度の変化として現れる。②その際、上部棚エネルギーは変化しない場合が多い。③P,SB,SN,ASなどの不純物を含むCR―MO鋼を約450∼580℃で長時間加熱すると脆化が発生する。④脆化した衝撃試験片の破面は、主に旧オーステナイト粒界から破断している。⑤2.25CR―1MO鋼や3CR―1MO鋼で脆化量が大きい。などがあります。溶接金属においても、焼戻し脆化が問題となる場合があり、その特徴は鋼材の場合と同じです。なお、溶接金属の焼戻し脆化感受性を化学成分値――から評価する方法としては、次のX値が知られています。これは、上述のように、不純物成分(P,SN,SB,AS)が焼戻し脆化に関連するものと考えられていることから提案されたものです。――X=(10P+5SB+4SN+AS)/100(PPM)また、図1に、以前にもこの用語解説で説明したステップクーリング(脆化促進熱処理)を行った場合のシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーの変化を示します。このように、脆化量を直接測定することで焼戻し脆化を評価することも行われています。(1994年3月号)焼戻し脆化150150


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