用語解説


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「摩耗」は、私たちの身の回りでよく経験される現象で2つの物質が接触して運動する場合に、必ずと言っていいほど見られるものです。そのような摩耗した表面を見ると、色々な摩耗のタイプがあることがわかります。摩耗は現象あるいは主原因などに基づいて種々に分類されており、また実際にはこれらが混合して起こることが多いと思われます。以下に摩耗の種類ごとにその特長を簡単に述べます。1.研削摩耗相対運動をしている部品内に硬質粒子が入ったり、硬質粒子が部品の表面をひっかいたりすることにより生じる摩耗を研削摩耗(図1)といいます。また粉体摩耗、アブレージョンとも呼ばれ、さらに作用する力の大小により細分され、(A)低応力アブレージョン、(B)高応力アブレージョン、(C)えぐり摩耗などに分けられます。サンドペーパーでこする場合、粉砕用ローラーミル、ジョークラッシャなどにおける摩耗がそれに当たります。このような研削摩耗に対しては一般に硬度の高い材料が用いられています。図2は比較的衝撃力の強い研削摩耗を想定して硬度と摩耗量との関係を調べたもので、傾向としては硬度が高いほど、摩耗量が低下することを示しています。ただしHV600程度以上のところではほとんど同じような値を示し、衝撃力の加わる摩耗では硬度が高いほど良いとは一概には言えないようです。2.エロージョン部品に粉体、液体、気泡などが衝突して生じる摩耗を一般にエロージョンとして分類しています。(図1)。これはさらに、(A)ドライサンドエロージョン(粉体の衝突)、(B)スラリーエロージョン(液体中の粉体の衝突)、(C)レインエロージョン(液滴の衝突)、(D)キャビテーションエロージョン(液体中の気泡の衝突)などに分けられます。サンドブラストによる研磨、サンドポンプの摩耗、ヘリコプターの回転翼の雨による摩耗および船のスクリューの摩耗などが代表的なものです。これらの摩耗に対して一般にはより高硬度な材料が良いとされていますが、環境によっては耐食性などを考慮して選定することが必要となります。3.凝着摩耗接触している2つの金属の凝着が原因で生じる摩耗を凝着摩耗といいます(図1)。平らな金属表面でも微視的に見れば完全に平滑な状態ではなく微小突起が存在しています。この部分に応力が集中し微小部分の凝着、破断が起こり摩耗が生じます。凝着摩耗の例としては、機械の軸と軸受け、ギヤ、各種部品のしゅう動面などがあります。なお相対運動の振幅が極めて小さい場合に生じる摩耗をフレッチングと称しています。これは常に振動のかかるボルトなどに生じます。凝着摩耗には作用圧力、すべり速度、材料組成、接触面の性状などが大きく影響し、必ずしも硬度の高いものが良いとは限らないようです。4.疲労摩耗ころがり接触がくりかえし作用し、表面下の最大せん断応力が発生する部分が疲れ破壊を起こすことによって生じる摩耗を、疲労摩耗といいます(図1)。レールの表面、ギヤの歯先、転がり軸受けの軌道面などがこれに当たります。歯車の歯先などでまだらに小さくはく離する現象をピッチング、硬化層やコーティング層が大きく欠落するのをスポーリングなどと呼びますがこれらも疲労摩耗の一種です。一般には硬度が高いほど耐疲労摩耗性が良くなります。以上各種摩耗の形態について述べてきましたが、実際の部品の摩耗では、種々の摩耗が重なる場合もあり、摩耗対策にはその要因が何であるかを見極めることが重要と考えます。(1988年7月号)摩耗146146


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