用語解説


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「粉体プラズマ溶接」はその言葉のとおり、溶接材料として粉体を用いて行うプラズマ溶接のことです。図1に粉体プラズマ溶接の概念図を示します。粉末溶接材料は搬送用ガス(キャリヤーガス)とともに、母材と電極間に発生しているプラズマアーク中に供給され、アーク熱で溶融されて溶着金属となります。電極囲りにプラズマガスを、アークの外側にはシールドガスを流します。これらのガスは一般にアルゴンガスが用いられています。電源は、通常直流正極性が使用されますが逆極性も一部適用されています。プラズマアークは、粉末を用いるということではプラズマ溶射とよく似ています。図2はプラズマ溶射の概念図で、電極とノズル間に発生したアークによりプラズマガスはプラズマジェットとなります。キャリヤーガスとともにプラズマジェットの中に送り込まれた粉末は溶融して母材に吹きつけられ皮膜を形成します。このように溶射では、アークが母材と電極間に発生せず、母材をアーク熱により直接溶融しませんが、粉体プラズマ溶接では、TIG溶接と同じように、母材と電極間に発生するアークにより母材を溶融しながら溶接が行われます。この点が両者の大きな違いとなっています。溶射のようなアークを非移行型アーク(NONTRANSFEREDARC)といい、粉体プラズマ溶接のような、母材と電極間に発生するアークを移行型アークといいます。このアークの状態から粉体プラズマ溶接のことをPTA(PLASMATRANSFEREDARC)溶接と呼ぶこともあります。では、粉体プラズマ溶接は他の溶接法に比べてどんな特徴があるのでしょうか。①まず、ワイヤとか棒状に加工できない難加工材料(硬いもの、もろいもの)でも粉末にすることで溶接材料として利用できます。従って極めて硬い炭化物を多量に含む粉末などを溶接材料として使用することが可能です。②粉末は、ワイヤ等よりも溶けやすく、また、熱源として非常に高温のプラズマアークを利用するため、高能率な施工が可能です。(TIGの2∼5倍程度)③プラズマアークはエネルギーのコントロールが比較的容易で、母材溶込みを浅く抑えることができます。通常5∼15%程度の希釈率で溶接が可能です。④肉盛厚さのコントロールが比較的容易であり、1層で1∼5MMの肉盛ができます。⑤ビードが平滑であり、加工代を少なくできます。こうした特徴から、粉体プラズマ溶接は、肉盛溶接に適した施工法といえます。ハードアロイ系材料の肉盛を中心に適用され始め、現在では、硬化肉盛全般において適用が図られつつあります。特に、他の施工法では不可能な、多量の炭化物を含む肉盛溶接が可能な特性を生かして、摩耗の激しい製鉄用ガイドロールなどへの適用が盛んに検討されており、今後ますます適用範囲は拡大すると期待されています。(1987年5月号)粉体プラズマ溶接(PTA溶接)140140


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