用語解説


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表代表的高速度鋼化学成分1の分類鋼種化学成分(%)系≦≦≦≦――〃〃〃〃〃〃―〃〃〃〃〃〃〃〃―〃系〃〃〃〃〃―〃〃〃〃〃〃―〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃系〃〃〃〃〃―〃〃〃〃〃―〃〃〃〃〃―〃〃〃〃〃JISCSIMNPSCRMOWVCOWSKHSKHSKHMOSKHSKHSKHSKHVSKHSKHSKHSKH20.730.830.400.400.0300.0303.804.5017.0019.000.801.2034.505.5041.001.509.0011.00510.800.904.505.505.506.701.602.20521.001.104.806.202.302.80550.850.954.605.305.706.701.702.204.505.50567.009.00101.451.6011.5013.504.205.204.205.20531.101.254.605.305.706.702.803.30541.251.404.505.505.306.503.904.50571.201.353.004.009.0011.003.003.709.0011.00∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼工具鋼のひとつとしてよく耳にする「ハイス」。実はこのハイスという言葉、英文名HIGHSPEEDSTEEL(ハイ・スピード・スティール)を縮めた形の通称であって、高速度鋼というれっきとした本名があります。高速度鋼といってももちろん高速で走れる鋼というわけではなくて、高速で切削できる工具鋼という意味です。今世紀初頭、それまで使用されていた炭素工具鋼に変わるものとして、18%タングステン-4%クロム-1%バナジウム系のいわゆる18-4-1型高速度鋼が開発されたのが高速度鋼……ハイスの歴史の始まりで、現在JISでは表1に示すように、大きく分けてタングステン系、モリブデン系、バナジウム系の3成分系が規定されています。ハイスの特長は硬くて、摩耗しにくく、その上強じんで、高温にもめっぽう強いということであり、切削工具はもちろんのこと、金型、ロール、その他耐熱耐摩耗部品に広く使用されています。高速切削で刃先が真っ赤になってもへこたらず、相手を削りつづけるという、ハイスのこの強じんな体力の秘密は一体どこにあるのでしょうか。ひと言でいえばハイスに含まれる合金元素のタングステン、モリブデン、バナジウム、クロム、これらの元素が炭化物を形成し、焼入れ、焼戻しの熱処理で、マルテンサイト地に微細な炭化物が析出分散した非常に硬い組織となるからです。すなわち、熱処理条件が非常に重要で、これを間違えれば、いくら素性が良くても根性なしのだめ夫君になるというわけです。ところで、一般のハイスは溶解してつくる溶製ハイスですが、これに対し、ハイス粉末をHIP処理して鋼塊とする粉末ハイスというものが最近実用化されています。粉末ハイスの特長は均一かつ微細な組織でじん性が高いことであり、従来の溶解法では得られなかった高炭素、高バナジウム系の新鋼種も開発されています。写真1に溶製と粉末の炭化物組織の一例を示しますが、溶製ハイスでは炭化物の分布に方向性があるのに対し、粉末ハイスでは均一な分散となっているのがわかります。ハイス……高速度鋼は鋼と名がつく中でもっとも高い単価を誇っており、名実ともに鉄鋼材料のエリートといえるでしょう。参考文献・日本鉄鋼協会「鉄鋼便覧Ⅳ」1990・三島「100万人の金属学、材料編」1975・神戸製鋼技術資料:神鋼の粉末高速度鋼(1990年10月号)粉末ハイス(SKH57相当)溶製ハイスSKH57ハイス図1顕微鏡組織(赤血塩)113


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