用語解説


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難吸湿溶接棒とは、一般の被覆アーク溶接棒に比べ被覆剤の吸湿を極めて少なくしたもので、吸湿により発生する作業性の劣化、X線性能の劣化、耐割れ性の劣化および溶接棒の再乾燥作業などの水分管理に要する工程を軽減することができる溶接棒のことです。溶接棒の吸湿に関する問題は溶接棒管理上の基本的問題として古くから取り挙げられ、種々検討されてきました。吸湿という現象には二種類あり、一つはガラスに水が付着した場合のような表面吸着、他の一つは木材に水がしみこむ場合のような内部吸着があります。溶接棒における吸湿はそのほとんどが被覆剤の吸湿であるが、被覆剤は50メッシュ以下の大小さまざまな粒子からなるガス発生剤、スラグ生成剤、脱酸剤などを水ガラスで固着したものであり、吸湿機構は複雑で次のような吸着(吸湿)現象があります。A)単味溶剤への吸着B)水ガラスへの吸着C)細孔内壁への吸着D)被覆剤表面での吸着。図1に被覆剤原料および組成の異なる水ガラスの吸湿特性を示します。単味溶剤は細かい粒子であるためその表面積は大きく、水分が多分子層になって短時間で表面吸着するが、比較的短時間で吸湿量は平衡に達します。水ガラスはその組成にもよるが、一般に長時間にわたって吸湿は進行し、その量も多く、吸湿に対する影響が大きいことがわかります。図1に示した水ガラスを用いて、乾燥温度(300∼500℃)を変化させた時の吸湿特性を調べると、乾燥温度が変化しても吸湿量に大きな差は見られません。同様に、これら水ガラスを使った被覆剤で吸湿特性を調べると乾燥温度が高くなるほど吸湿量が減少し、その傾向は350℃くらいから顕著になります。これは高温乾燥することにより、粉体と水ガラスを混合した時に生じた空間および捏和中にまきこんだ空気または反応ガスによって多孔性となったものが、焼結されて細孔が減少し、吸湿性が向上することを示しています。従って、溶接棒の耐吸湿性を保つには、使用する原料について選択することと、水分を吸い難い水ガラスの組成にすることとともに被覆剤自体の多孔性を改善する製造技術を欠かすことができません。図2に一般の低水素系溶接棒と難吸湿低水素系溶接棒の吸湿特性を示します。このように高温多湿下において、一般低水素系溶接棒では、短時間で限界吸湿量(図中では0.5%)に達してしまい、欠陥のない溶接部を得ようとすれば、少なくとも半日に1度は、持ち出した溶接棒を回収し、再乾燥をしなければなりません。しかし、難吸湿溶接棒は図に示すように限界吸湿量に達する時間が長くなるため、溶接棒の回収あるいは再乾燥などの水分管理を緩和することが可能となります。神戸製鋼の難吸湿溶接棒として、ZERODEシリーズ(Z-1,Z-44,Z-6V,Z-52,Z-43F,Z-50F),LB-52UL,590∼980N/㎜2級高張力鋼用溶接棒、ステンレスのHIMELTシリーズなどがあります。難吸湿溶接棒はすでに造船、橋りょう、鉄構関係など種々の分野で好評を博しています。参考資料1.溶接の研究№15(昭和50年度)被覆アーク溶接棒の吸湿と乾燥に関する研究2.溶接施工委員会資料(昭和49年度)難吸湿溶接棒について3.神鋼溶接棒だより(昭和50年度)難吸湿溶接棒について(1984年12月号)難吸湿溶接棒108108


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