用語解説


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私は、厚化粧が嫌いです。どうしてかというと、厚化粧する女性(OR最近の男性)は、きっと顔だけでなく心も隠蔽したいものがあるに違いない!という偏見をもっているからです。ところが鋼材の中には、きれいに厚化粧をするものがあると聞いたら皆さんは驚かれるでしょうか?耐候性鋼はCU,CR,P,用途に応じてNI、MOなどが添加され、大気中に長時間さらされても普通鋼に比べて腐食の進行が遅いという特徴を持った鋼材です。ここでいう腐食とは、いわゆる錆だらけになって、表面からボロボロと朽ちていくことをいっています。図1でその特徴がわかると思いますが、高耐候性鋼と呼ばれるものでは、1年半を過ぎたあたりから、腐食の進行が横這いになっています。ではなぜ、耐候性鋼は腐食しにくいのでしょうか?すぐ錆びる普通鋼と、錆びにくいステンレス鋼の違いからまず考えてみましょう。普通鋼の表面は図2の中央のようになっており、最初はミルスケールと呼ばれる酸化皮膜(FE3O4)で覆われています。ところが、FE3O4皮膜は格子定数(原子が周期的に並ぶ間隔)がFE地のそれと異なっており、お互いの連結がうまくいきません。その結果、微細なクラックがいたるところにできています。そして、クラックに水が入るとFE3O4を正極、FE地を負極とする局所的な電池ができて、いわゆる赤錆(FEOOH)ができるのです。いっぽう、ステンレス鋼では図2の右端のように、(FE,NI)CRO4の皮膜がその表面にできます。この皮膜の格子定数の一つはFE地のそれのちょうど2倍で、互いにうまく連結できます。従って、この皮膜は薄くても緻密で、見た目には金属光沢の外観をいつまでも呈していることになります。ステンレス鋼は薄化粧上手と言っていいでしょう。では、耐候性鋼の表面はどうなっているのでしょうか?実は、耐候性鋼も普通鋼と同じようにFEOOHができるのですが、その時FEOOHとFE地の間に、微量に添加したCU,CR,Pなどが集まってくるといわれています。このCU,CR,Pの濃縮層は、FEイオンが下地から溶け出してFEOOHになるのを妨ぐだけでなく、非晶質といって原子が不規則に並んでいるおかげで、FE地ともFEOOH部分ともうまく連結し、緻密な錆のお化粧をすることができるのです。以上のような理由で、耐候性鋼は錆色以外のメークはできませんが、厚化粧上手なやつというわけです。厚化粧でも良い、錆色でも良いという向きには、コストも溶接性も普通鋼なみの耐候性鋼を、ぜひご愛用ください。(1994年5月号)耐候性鋼8888


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