用語解説


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セルフシールドアーク溶接法は、通称“ノンガス”または“オープンウェルド”とも呼ばれていましたが、1982年、JISの用語として“セルフシールドアーク溶接法”の名称に統一されました。セルフシールドアーク溶接は、図1に示すように、溶接時に、ワイヤに包みこまれているフラックスが、分解して発生するガスにより、アーク中の溶滴および溶融池が大気と接触するのを防止しながら溶接を行う方法です。従って、ガスシールドアーク溶接には、不可欠な炭酸ガスやアルゴンガスなどを一切必要としません。セルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤには、空気中の窒素や酸素によるピットやブローホールを防止して健全な溶着金属をえるために、①ガス発生剤、②窒素固定剤および脱酸剤が必須成分として含まれています。通常、ガス発生剤としては、CAF2のような弗化物、CACO3のような炭酸塩、MGのような低弗点の金属が併用されます。このようなシールドをかいくぐり、溶滴や溶融池に侵入してくる窒素や酸素に対しては、AL,TI,SI,MN,ZRなどと窒素や酸素との親和力の強い元素を添加して、窒化物や酸化物として固定し、窒素や酸素の害を少なくするよう工夫がなされています。セルフシールドアーク溶接の大きな特長としては、①シールドガスがいらない、②耐風性に優れているに集約され、土木、建築などの屋外作業分野に適した溶接法と言えます。この溶接法が、国内で実用化され始めたのは、1960年代初期です。当初は、交流垂下特性電源(通常の被覆アーク溶接の電源)と太径ワイヤ(2.4,3.2㎜Φ)の組合せで、土木、建築、造船の分野に広く適用され、現在も土木の分野で適用されています。近年、直流定電圧特性の電源(通常の炭酸ガスアーク溶接用の電源)と細径ワイヤ(1.6,2.0㎜Φ)を組合せたセルフシールドアーク溶接法が開発されています。交流のセルフシールドアーク溶接に対して、①アークスタート性、②アーク安定性、③トーチの軽量化などの面で作業特性が改善されているうえ、溶接性能面においても向上しており、今後の普及が期待されます。なお、実用化されているセルフシールドワイヤの種類としては、軟鋼、490N/㎜2級高張力鋼、ステンレス鋼および肉盛溶接用などがあり、それらの規格化(JIS,AWS)も進んでいます。例えば、炭素鋼用ワイヤのJISZ3313,AWSA5.20,ステンレス鋼用ワイヤのJISZ3323,AWSA5.22などです。次に神戸製鋼所が製造、販売しているセルフシールドワイヤを紹介します。太径ワイヤとしては、靭性、耐割れ性を重視したOW―56,鋼管抗などに多く用いられているOW―56Aがあります。一方、細径ワイヤとしては、全姿勢での作業性を重視したタイプのOWS―50Aなどが取り揃えられています。現状では、セルフシールドアーク溶接の適用は、比較的せまい分野に限定されていますが、今後、ワイヤや溶接機の発達によって、屋外溶接の半自動化、もしくは自動溶接化の大きな手段として期待される溶接法であります。(1989年9月号)セルフシールドアーク溶接法85


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