用語解説


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析出時効硬化はステンレス鋼やAL合金の一部に見られ、これらを高温から急冷し、室温または少々加熱して、しばらく置いておくと、硬く、強くなる現象をいいます。例えばジュラルミン(AL―CU系合金)も析出時効する合金の一つです。CUは高温(545℃)では5%ほどAL中に固溶しますが、室温ではきわめて少なくなります。しかし高温から急冷した場合には、CUは無理やりAL中に固溶されてしまいます(過飽和固溶体)が、このような状態は不安定なため、何とかして余分なCUをCUAL2として吐き出そうとします。これを時効析出といいます。微細なCUAL2が合金の地に多数出てくるため、ひずみが生じ、合金は硬く、強くなります。これらの現象が室温で生じるものを「常温時効硬化型」、少々加熱しなければならないものを「人工時効硬化型」といいます。析出時効硬化する合金を溶接する場合には熱影響部(HAZ)の軟化が問題となります。というのはHAZの熱サイクルを考えてみますと、ちょうど高温から急冷したものと同様な状態になっているからです。そのため、人工時効硬化型の合金では溶接のままでは析出が生じないため、軟化したままの状態となり、強さも母材に比べ低下します。図1にその例を示します。時効硬化性のないA5083(AL―MG系)では熱影響部に軟化は認められませんが、人工時効硬化型のA6061(AL―MG―SI系)ではビード中心から30㎜程度まで軟化していることがわかります。この軟化部も190℃で3時間ほど加熱すれば、微細なMG2SIが析出し、硬さもかなり回復しますが、熱処理が必要なため、大型構造物では難しくなります。このような欠点をなくすため、常温で時効硬化し、また溶接性も良いAL―ZN―MG系の合金が開発されました。図2に溶接部の硬さ分布を示します。この合金の母材の硬さはHRF95程度ですが、溶接直後のHAZはHRF70まで低下しています。ところが室温で1年間放置しておきますと、HAZの硬さは母材とほとんど変わらないところまで回復することがわかります。以上AL合金を中心に析出時効硬化について説明いたしましたが、それぞれの合金の特長を良く理解して使用することが大切です。(1985年1月号)析出時効硬化83


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