用語解説


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通常、鋼構造物が破壊する場合、応力集中部などを起点として亀裂が発生し最終的に破断に至ります。この破壊形態は、広義に延性破壊、ぜい性破壊に分類されており、一般的にそれぞれの特徴は、表1のように示されます。ただ、ぜい性破壊においてもほとんどの場合、亀裂進展の初期段階では、延性亀裂の成長がみられます。昨年発生した阪神大震災で被災した鋼構造物の調査が進められ、多くの報告がなされていますが、その中で注目されている事例があります。それは従来呼ばれていたぜい性破壊とは異なる“ぜい性破壊”です。この“ぜい性破壊”は、破壊部の周辺が十分に大きな変形を伴っているにもかかわらず、巨視的には亀裂発生部からの延性亀裂の進展がみられず、破面のほぼ全域がぜい性破壊に属しているものでした。そのため、従来一般的に言われるぜい性破壊と区別する意味で、全(断)面降伏後ぜい性破壊、または高応力ぜい性破壊と呼ばれています1)。その一例を以下に示します。写真1は震災破断部から採取された柱・梁仕口部の外観ですが、地震時の負荷荷重により下フランジが大きく変形しています。写真2はその破断面の写真ですが、亀裂がスカラップ止端から下フランジ断面を両側外方向に進んでいます。破面形態は高倍率のSEM観察では、ぜい性破壊特有のリバーパターンを呈しています。どうしてこのような破壊が起きたのかは種々検討されている段階ですが、以下のような原因が考えられています。1)高歪量………地震時の初期波により、鋼材が高歪変形を受けて加工硬化、じん性劣化を生じた。2)高歪速度………地震の変位速度が大きいため、材料強度の上昇とじん性劣化を生じた。その他に気温、設計ディテール、材料特性、溶接施工の問題なども挙げられていますが、いずれにせよ、地震波により柱・梁仕口部に大きな歪量と歪速度が生じて、このようなぜい性破壊が生じたものと考えられています。参考資料1)豊田政男:溶接施工からみた阪神・淡路大震災における建築鉄骨損傷鉄構技術,1996.1,2,3.(1996年5月号)破断周辺部亀裂の進展速度支配的な破面形態主な破断因子マクロミクロ延性破壊変形大小凹凸大ディンプル強度不足ぜい性破壊変形小大平滑リバーパターン低じん性高応力脆性破壊表1延性破壊とぜい性破壊の一般的な特徴梁ウェブスカラップ止端柱側写真1震災破断部から採取された柱・梁仕口部写真2写真1の柱・梁仕口部の破断面5252


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