用語解説


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C引張強さ(N/MM2)降 伏 点(N/MM2)図2 調質高張力鋼の降伏比(模式図)軟鋼に引張荷重を加えますと、図1の曲線1に示すような荷重―伸び線図がえられます。この図で曲線1のEとCに相当する荷重を、それぞれ試験片平行部の原断面積で割った値をその材料の引張強さ(N/㎜2)および降伏点(N/㎜2)といいます。降伏点は、その材料が永久ひずみを生じない(厳密にはそれより若干低い応力でわずかに永久ひずみができる)応力値で、前述の引張強さとともに構造物設計にとって最も重要な値です。ここで説明します降伏比とは、降伏点と引張強さの比(降伏点/引張強さ)をいいます。また材料によっては、例えば調質型高張力鋼、ステンレス鋼などのように降伏点があらわれない材料もあります。図1の曲線2はステンレス鋼の荷重―伸び曲線を示しますが、この場合は、0.2%の伸びに相当する荷重を試験片平行部の原断面積で割った値を耐力(N/㎜2)といい、この耐力と引張強さの比をその材料の降伏比とします。降伏点(または耐力)は、構造物の設計のため最も重要な基準になる値で、例えば、降伏点(または耐力)の5/8または2/3をその材料の許容応力にとる例もあります。一般に鋼の引張強さを上げると、その材料の靱性と溶接性は低下する傾向がありますので、引張強さはあまり上げずに降伏点を上昇させる(すなわち、降伏比を高める)ことができれば、それだけ許容応力を高めることができて鋼構造物の板厚は薄くなり、重量軽減が図れるほか、材料費、加工費、溶接コストも減少します。降伏比を上げる方法としては、合金元素の少量添加以外、圧延後焼入れ・焼もどしの熱処理(調質ともいう)を施す方法があり、図2に示すように引張強さの増加量よりも降伏点の増加量が大きくなって降伏比を高めることができます。さらにこのような調質処理することによって、鋼の靱性と溶接性も向上します。最近の制御圧延と呼ばれる特殊な圧延処理においても降伏比を高めることができます。従って、降伏点(または耐力)を基準に設計する場合、材料の降伏点(降伏比)を高めることによって、それだけ許容応力が大きくなり、その結果上述のような多くの利点がでてきます。(1983年12月号)降伏比51


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