用語解説


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皆さん拘束度とは何かご存知ですか。溶接に携わっている人なら「ははぁ、高張力鋼の溶接の割れで問題となっているあれか、確か溶接継手の拘束の度合をいうはずだ。」とピンとくるものと思います。しかしながら、「拘束度が示している値は、どのような意味を持ちどのようにして求めるのですか。」とたずねられると、答に窮してしまうのではないでしょうか。それは拘束という言葉があまりにもポピュラーであるため、何となくわかったような気分になってしまい、拘束度なるものの概念が十分理解されていないからだと思います。●拘束度の基本概念溶接における拘束度の基本概念は今から35年ほど前、単純な突合せ継手に対して始めて導入されました。それは図1に示すように、2枚の鋼板の両端が溶接の全過程を通じて、常に固定されている単純な突合せ継手に対するものです。もし2枚の鋼板が何ら外的拘束を受けることなく溶接によって結合される場合には、冷却過程中の熱収縮は図2に示すようになります。すなわち、溶接によって継ぎ合わせた2枚の鋼板の最終的な長さは、凝固収縮によって最初セットした時の長さよりも少し(溶接条件により異なる。図2の場合では0.35㎜)短かくなります。しかし、この場合には継手は外的拘束を受けていないので拘束応力は生じません。これとは逆に、図1で考えたように継手の両端が完全に拘束されているような場合には、自由な収縮が妨げられ、母材(2枚の鋼板)を無理やり引張って凝固するため、継手に拘束応力が生ずることとなります。すなわち、継手に自由収縮によって生ずるはずの縮み(S)分だけ伸ばすような外的引張力が働いたのと同じことになります。実際には鋼板の長さ(溶接線)方向によって拘束応力が異なり、上に述べたような関係は単純には成立しませんが、拘束度を考える上での基本概念は全く同じです。このように継手が拘束されると溶接部に負担がかかるため、不純物等の影響で強度の弱い部分があるとき、あるいは水素の影響などで割れが生じるという重要な問題が発生することがあります。●拘束度の算出法それでは、この拘束の度合を溶接継手に応じ、どのように数値で示すことができるでしょうか。そこで求められたのが“拘束度”なるもので、詳細な技術説明は省略しますが、次式のように示すことができます。これの意味するところは“溶接継手のルート間隔を単位長さ縮めるために必要な単位溶接長当たりの力の大きさK(N/㎜・㎜)”で、本式の導入には前記の“溶接部の凝固収縮→継手長さの収縮不能→拘束応力の発生”の考えが基本になっています。K=EH――K:拘束度(N/㎜・㎜)E:ヤング率(N/㎜2)H:板厚(㎜):板幅(㎜)●拘束度の測定例拘束度の大きさは、母材の種類、幾何学的形状によって決まり、同じ形状であれば軟鋼と高張力鋼では引張強さの大きい高張力鋼の方が拘束度が大きく、また厚板で幅()の小さい形状の物は、拘束度が大きくなることも上式から容易に理解できます。割れ試験片や実際の構造物についての測定結果も種々発表されており、鉄研式スリット割れ試験片の拘束度は板厚40㎜で39,000N/㎜・㎜程度であり、また、船のアッパーデッキの溶接部では13,000N/㎜・㎜(板厚:32㎜)、橋のフランジ溶接部では18,000N/㎜・㎜(板厚:40∼60㎜)で、鉄研式割れ試験は実際の構造物に比べて拘束度がかなり大きく、厳しい試験法と言うことができます。(1979年10月号)拘束度5050


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