用語解説


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アーク溶接において、ビード終端が凝固収縮するときにできるくぼみを「クレータ」といいます。そこには、しばしば割れが発生することがあり、これを「クレータ割れ」と呼んでいます。この割れは高温割れの代表的なものであり、図に示すように縦割れ、横割れ、星割れなどがあります。クレータ割れは高張力鋼やステンレス鋼など合金元素量の多い鋼およびニッケル合金、アルミ合金などで発生します。クレータ割れの発生原因は次のように考えられます。アークを急激に切ると、溶融していた金属は急冷凝固し、凹形をしたクレータができます。凝固中のクレータには、溶融金属の凝固による収縮および周囲の母材や既に凝固冷却した溶接金属による拘束によって、引張力がはたらきます。その際、クレータでは最後に凝固する部分をうめるのに十分な溶融金属が不足するため、割れが発生します。ですから、クレータ割れは鋳造時にみられる「引け巣」のような欠陥と考えることができます。クレータ割れが合金元素量の多い鋼やニッケル合金に多くみられるのは、一般に合金元素を加えるほど、クレータ割れが発生しやすい温度範囲(凝固が始まる温度と終わる温度の差に相当します)が大きくなるためと考えられます。クレータ割れは継手の初層やルートギャップが大きい継手を溶接した場合のように拘束力が大きく、クレータ部に大きな引張力がはたらく部分に発生します。また、溶接入熱が高くなってクレータが大きくなると収縮量が大きくなるため、割れが発生しやすくなります。溶接構造物がクレータ割れを内在したままの状態で作られると、強度低下の原因になるだけでなく、場合によっては脆性破壊を引き起こす危険があります。クレータ割れの防止対策としては、まず割れ感受性の低い溶接材料を選定することです。オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル合金用溶接材料などでは、P,Sなど高温割れに有害な元素を極力低下させてクレータ割れが生じにくい化学組成にしております。いっぽう、溶接施工に際しては以下に示すような対策が割れの防止に有効です。1)ルートギャップが過大にならないようにする。仮付けに際しては、治具やスペーサなどによって適性なルートギャップを保つようにする。2)突合せ溶接の初層ではクレータがルート部に残らないように、クレータを開先の壁面に逃してからアークを切るようにする。3)継手にタブ板の取付けが可能な場合には、クレータ部をタブ板上に逃すようにする。4)入熱が過大にならないように溶接条件を選び、適切なウィービング幅で溶接を行ってクレータが過大にならないようにする。5)ティグやミグ溶接ではクレータフィラを行って凹形のクレータができるのを防止する。クレータフィラとは、アークを切るときに数分の1秒程度の短時間だけ電流を漸減することにより、クレータを盛り上げる方法です。被覆アーク溶接でも、アークを切る前にクレータ部を十分に盛り上げるようにする。なお、クレータ割れが発生してしまった場合には、グラインダによってクレータ部をはつり取ってからビード継ぎを行うことが必要です。(1986年10月号)クレータ割れ45


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