用語解説


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極性とは、溶接電極(溶接棒またはワイヤのこと)と母材の電位関係を表すもので、直流アーク溶接の場合、極性が変わると流れる電流の向きが逆になります。なお、交流アーク溶接の場合は、電流の方向や極性が周波数と等しい回数で変化します。従来、わが国では直流アーク溶接で溶接電極(以下電極と略す)を電源の陰極(マイナス極)側に、母材を電源の陽極(プラス極)側に接続する場合を正極性、またその逆で電極を陽極側に、母材を陰極側に接続する場合を逆極性と一般に称していました。しかし、ヨーロッパなどでは正極性、逆極性がわが国とは全く逆の意味で使われることがあり、明確化するためJIS用語では極性は、溶接棒の場合、棒プラス、棒マイナス、溶接ワイヤの場合、ワイヤプラス、ワイヤマイナスで表しています。極性は、溶接アーク現象、溶融速度および溶込みなどに大いに影響しますが、その度合はマグ溶接、被覆アーク溶接、ティグ溶接などのアーク溶接法、フラックス成分および使用するシールドガス組成などにより異なります。1.アーク現象電極が溶融して母材側に移行する現象が円滑であるかどうかは、溶接の安定性や作業性を大きく左右します。この溶滴移行現象は極性の影響を強く受けます。特に極性により溶滴の移行現象が大きく左右される溶接法の一つとしては、マグ溶接があります。マグ溶接は、通常、ワイヤプラスで行われますが、ワイヤマイナスとした場合、陰極点は溶融した電極の下端部付近に集中し、アークの押上げ力が著しく大きくなります。その結果、溶滴は大きく、かつ母材への溶滴移行現象が円滑でなくなるため、大粒のスパッタが発生し、溶接作業性は悪化します。なお、このような極性の影響はワイヤの成分、シールドガス組成により大きく異なります。2.電極の溶融速度マグ溶接およびサブマージアーク溶接などでは、通常、極性がワイヤマイナスの方がワイヤプラスよりも溶融速度が速くなります。このように溶融速度が速くなるのは、電極から母材へ流れるアーク中の電子が電極先端で大量に放出される際に発熱が生じるためと考えられています。3.溶込み図1に極性による溶込み深さの相違を示します。被覆アーク溶接の場合、フラックス成分により異なりますが、ティグ溶接と同様、一般に棒マイナスの方が溶込みが深くなります。しかし、ガスシールドアーク溶接の場合は、ワイヤプラスの方が溶込みが深くなります。また、最近、マグ溶接において、極性の比率を変えることにより、溶込みを制御する交流アーク溶接機が開発されています。4.クリーニング作用直流ティグ溶接で棒プラスの極性では母材表面の酸化膜が陽イオンによって除去され、きれいな面となります。これをクリーニング作用といいます。AL,MGなどの、表面が酸化されやすい金属または合金のティグ溶接ではこのクリーニング作用を利用して溶接します。(1988年8月号)極性41


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