用語解説


>> P.26

オーバラップ(OVERLAP)という言葉の意味は、「重なる、重ねる」とか「はみ出る」などのことです。一般的には、映画などで前の場面に次の場面を重ねて映す、いわゆるオーバーラップシーンなどでよくご存じのことと思います。これが溶接用語として使われる場合には、溶接欠陥の一つで、まったく味気のない話になってしまいます。溶接のオーバラップとは、図に示すようなビード形状に関する欠陥で、母材にビードの端部が溶着せずに「単に重なっただけ」の状態を言います。JIS用語では、オーバーラップとは言わずにオーバラップと言い、「溶着金属が止端で母材に融合しないで重なった部分」と定義されています。すみ肉溶接ビードのオーバラップは、必要とされる脚長が得られていないということになりますし、すみ肉、突合せいずれのビードの場合にも、溶接部に切欠きが残存することになり、特に疲労を問題にするような継手には、絶対にあってはならない欠陥です。溶接では、オーバラップはよくアンダカット(UNDERCUT)と並べて云々されることが多いのですが、これはこの二つの欠陥がビード形状に関するものであるというほかに、欠陥発生の原因がほとんど同じ要因で逆の関係にあるためです。ガスシールドアーク溶接におけるオーバラップの発生原因としては次のような事項が挙げられます。1)溶接速度……遅すぎる(早すぎるとアンダカットになる。以下同じ)2)アーク電圧……低すぎる3)溶接電流……低すぎる4)トーチ角度……前進角のつけすぎ以上がオーバラップの主な原因ですが、すべて溶接条件の不適正に起因すると考えてまちがいありません。なおこの他に水平すみ肉溶接において、ワイヤの狙い位置が立板側に寄りすぎると、オーバラップが発生しやすくなります。いずれにしても、オーバラップは、1パスで無理に大きなビードを得ようとすると生じやすくなります。オーバラップを防止するためには、適正な溶接条件を守ることがまず第1です。また必要に応じて適正なウィービング操作を行うことも、オーバラップ防止に有効です。オーバラップの検査は目視による外観検査によって行われるのが一般的で、合否の判定は検査官が下すことになります。定量的な評価方法は確立されていないようです。当然許容される程度は、その継手に要求される性能によって決められることではありますが、仕様書などで溶接継手の要求性能を決める場合には、「溶接部にはアンダカットやオーバラップがあってはならない」と冷たく記載されるのが普通です。従って、特に溶接条件に注意をして、オーバラップを発生させないことが肝心です。ちょっとした気くばりで十分防ぐことができるものですから……。(1984年7月号)オーバラップ2626


<< | < | > | >>