技術レポート

神戸製鋼所溶接事業部門発行の技術誌「技術がいど」。この中の「技術レポート」コーナーを2005年1月号からこれまでをまとめた電子カタログです。


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技術レポート[VOL.482008-4]-1-9%NI鋼用フラックス入りワイヤ「DW-N709SP」鈴木正道(株)神戸製鋼所溶接カンパニー技術開発部1.はじめに近年、液化天然ガス(LNG)は他の化石燃料に比べて環境負荷が小さいエネルギーとして知られるようになり、その消費量は世界的に増加しつつある。それに伴いLNG基地の建設、LNG船の建造は活発化してきている。LNGは-162℃の極低温で貯蔵され、使用される鋼材は地上式タンクの場合には、強度と低温じん性に優れる9%NI鋼が用いられる。また、その溶接材料には、熱処理せずに溶接のままで高じん性が得られるNI基合金が用いられており、溶接法としては被覆アーク溶接(SMAW)、サブマージアーク溶接(SAW)、ティグ溶接(TIG)が主に使用されている。一方、フラックス入りワイヤ(FCW)によるマグ溶接(MAG)については一部で使用実績があるものの、種々の問題から適用はあまり進んでいない。本報では、従来のFCWの問題点を克服し、LNGタンクの高効率施工に寄与すべく開発した9%NI鋼用FCW“DW-N709SP”について紹介する。2.開発目標これまで9%NI鋼の溶接にFCWの適用が進んでいない大きな理由としては、耐割れ性の観点から適用条件範囲が狭いことと、全姿勢での溶接作業性が不十分であることが挙げられる。そのため、本FCWの開発目標性能として以下を設定した。①溶接速度40CM/MIN以下で割れが発生しないこと。耐割れ性は半自動溶接を想定し、溶接士が施工する上で実用的な範囲で割れが発生しないこと。②全姿勢溶接が可能であること。LNGタンクでは立向の継手や、上向きのすみ肉等がありこれらを想定した全姿勢溶接での溶接が可能であること。③溶着金属の引張強さ:690MPA以上、-196℃における吸収エネルギー:75J以上近年LNGタンクが大型化しており、それに伴い厳しくなっている溶接材料への機械性能要求を満足すること。3.基本合金設計全姿勢の作業性を考慮しスラグ成分はチタニヤ系を前提とした、しかしチタニヤ系のスラグではじん性、耐割れ性が低下することが一般的である。チタニヤ系のスラグでも目標の性能が得られる合金系の抽出を行った。成分系としてNI基合金において、CR:2~15%、MO:5~20%の範囲で16種の試作FCWを用いてCR、MO最適量の検討を行った。試作FCWについて全溶着金属を作成し、引張強さ、-196℃における吸収エネルギーの測定を行った。また凝固割れ感受性の評価としてトランスバレストレイン試験を行い、凝固脆性温度領域(BTR)を測定した。引張および衝撃試験はJISZ3111に従い行った。トランスバレストレイン試験は図1に示すようにFCWで作成した肉盛溶接金属の表層より5×50×100MMの試験片510050試作FCWで肉盛溶接バレストレイン試験片(MM)図1バレストレイン試験片作成要領


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