技術レポート

神戸製鋼所溶接事業部門発行の技術誌「技術がいど」。この中の「技術レポート」コーナーを2005年1月号からこれまでをまとめた電子カタログです。


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技術レポート[VOL.472007-4]-3-った。しかし、前述のように、AC1変態点を超えてPWHTを行うと、オーステナイトが形成され、PWHTの冷却過程で、そのオーステナイトの一部または全部がマルテンサイトに変態する。つまり、マルテンサイト組織が焼戻されずに残留する恐れがある。図4に示すように、オーステナイト形成元素であるMNやNIが多く含まれるほど、AC1変態点は下がる傾向にある。そこで、今回のB9規格はそのPWHT温度を760℃以上の温度で行っても、組織の変化が生じないことを目的に改定された。具体的には、溶接金属のAC1変態点を760℃以上にするため、B9規格ではオーステナイト形成元素であるMN+NIの量を1.5%以下までとする制限を設けた。図5にAC1変態点の測定時に得られた線膨張-温度曲線の一例を示す。体心立方結晶構造のフェライトから面心立方結晶構造のオーステナイトに変態する時、熱膨張曲線が縮む。本稿では、その縮み開始温度(接線からのズレが生じる温度)をAC1変態点と読み取っている。但し、AC1変態点の測定には明確に統一された基準がない。昇温速度やAC1変態点の読み取り方、測定試料自身の均一性(ASWELD材、固溶化材)により、AC1変態点の読み取り値は異なってくるため、今後、測定基準に対する議論が必要であろう。4.B9合致溶材の諸性能当社の従来型MOD.9CR-1MO鋼溶接材料と新しく開発されたB9規格合致被覆アーク溶接棒CM-96B9、同TIG溶接材料TGS-90B9の諸性能の一例を紹介する。4.1溶接金属化学成分及びAC1変態点表2に溶接金属の化学成分、AC1変態点を示す。B9規格合致溶接材料は、MN+NIの含有量が低いほか、溶接金属のCをB9規格に合わせて従来型MOD.9CR-1MO鋼溶接材料より高く設計している。Cはオーステナイト形成元素でもあり、Cの含有量を上げることで、Δ-フェライトの残留を抑制する狙いもある。なお、B9規格合致材は従来型MOD.9CR-1MO鋼溶接材料よりもAC1変態点が高く、より高い温度でのPWHT条件に適用できる。7007207407607808001.21.41.61.82.02.2AC1予測値*AC1=854.5-43.9×(MN+NI)-9×(MN+NI)2ASWELD固溶化後AC1変態温度(℃)MN+NI(WT%)図4MN+NIの量によるAC1変態温度への影響0306090120150180600700800900100011001200AC1線膨張(ΜM)温度(℃)図5線膨張-温度曲線(昇温時)フェライト組織オーステナイト組織AC3CSIMNNICRMOVNBNMN+NI0.2%YS.TS.-(鋼板)ASTMA387GRADE910.08-0.120.20-0.500.30-0.60≦0.408.00-9.500.85-1.050.18-0.250.06-0.100.03-0.07-*5)≧415585-760SMAWASWA5.5E901X-B9*1)(2006年版)0.08-0.13≦0.30≦1.25≦1.08.0-10.500.85-1.200.15-0.300.02-0.100.02-0.07≦1.50760℃×2H≧530≧620SAW*2)A5.23FXX-B9*3)(1997年版)0.07-0.130.15-0.30≦1.25≦1.008.00-9.500.80-1.200.15-0.250.03-0.100.03-0.07-745℃×1H≧538620-758GTAW*4)A5.28ER90S-B9(2005年版)0.07-0.130.15-0.50≦1.20≦0.808.00-10.500.85-1.200.15-0.300.02-0.100.03-0.07≦1.50760℃×2H≧410≧620表1MOD.9CR-1MO鋼材のASTM規格と溶接材料のAWS規格引張性能(MPA)*1)E901Xの“X”は5、6などに分けられ、E9015は被覆系統が低水素NA系で電源極性が直流、E9016は被覆系統が低水素K系で電源極性が直流又は交流を示す。*2)SAW用溶接材料の規格は未だ改正されていないが、将来、MN+NI≦1.5WT%が加わることが想定される。*3)FXX-B9の“XX”は数字の7~12で最低引張強度を表す。上表には90KISクラスの引張性能を示す。*4)GTAWは溶接金属化学成分ではなく、ワイヤ或いはロッドの化学成分を示す。*5)鋼材の製造時に、NORMALIZING及びTEMPERING処理が行われる。NORMALIZING:1040~1095℃、TEMPERING:≧730℃。規格溶接方法溶接金属の化学成分(WT%)PWHT


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