溶接110番

神戸製鋼所溶接事業部門発行の技術誌「技術がいど」。この中の「溶接110番」コーナーをまとめた電子カタログです。


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AB    B希釈率=―――×100(%)    A+BA:母材表面より上部の面積B:母材表面より下部の面積10∼20°建設機械のパワーショベルのバケットの先についているつめは、土砂を掘り起こす刃先であり、土砂により激しい摩耗を受けます。一般に、使用されている鋼材は、中炭素鋼あるいは高MN鋼です。補修溶接を行う場合、このいずれであるかを確認しておくことがまず重要です。というのは、この2つの鋼材を溶接する時のポイントがまったく逆であるからです。中炭素鋼は、その熱影響部が硬化しやすく低温割れの危険があるため、予熱、直後熱により除冷します。一方高MN鋼は、高温に保持されると脆化するため、低入熱の溶接条件を使用し、また水冷により急冷します。この2種類の鋼材の簡単な見分け方を紹介します。磁石に付けば中鋼炭素鋼、付かなければ高MN鋼と判別できます。今回は、中炭素鋼を例に説明します。中炭素鋼に直接硬化肉盛溶接材料で溶接すると、その熱影響部のビード下割れなどの危険があります。このため軟鋼、490N/㎜2級高張力鋼用のLB―47,LB―52,MG―50などで一層溶接を行います。これを一般に『下盛り』と呼んでいます。それでは下盛り溶接の留意点について説明します。・前処理:建設機械部材では、ドロ、サビなどが付着していることが多いので、まずこれをきれいに取り除きます。軽くグラインダにて一掛けするほうがよいでしょう。・熱管理:可能であれば、母材の化学成分から鋼材の硬化性の目安となる炭素当量を算出します。それぞれの母材の炭素当量により表1に示す予熱温度にて予熱を行います。S45Cレベルであれば、200℃程度の予熱温度となります。また溶接中でも母材温度が予熱温度より低下しないよう再加熱を行い、温度を保持します。・溶材選定:溶材は割れの原因の一つである拡散性水素量を少しでも少なくするよう、低水素系の溶材を選定します。被覆アーク溶接棒ならば必ず低水素系を使用し炭酸ガスアーク溶接の場合もソリッドワイヤを使用します。・溶接条件:溶接電流は、極力低電流を使用し、希釈率(図1)を低くすることを心掛けます。高電流での溶接は溶込みを深くし、希釈率を高くします。そのため下盛りビード自体の硬度が高くなり、割れが発生する場合があるので注意してください。また、運棒方法もウィービングは極力避けストレート運棒をし、図2のように前ビードの止端部を狙い『ハーフ・ラップ』させると、よりいっそう希釈率が低く抑えられます。『下盛り』により健全な溶接金属が得られれば、あとは所定の硬さの硬化肉盛溶接を行います。通常、ビッカース600程度要求されており、被覆アーク溶接棒のHF―600、あるいはFCWのDWH―600を使用します。溶接方法としては、『下盛り』でも紹介しましたように下盛の希釈を少なくするため『ハーフ・ラップ』させて行います。十分な硬さを確保するため3層溶接を行います。実際の補修溶接では硬化層が一部に残っている場合や部分的欠けなど、状況はさまざまあると思われます。以上説明を行いましたように、予熱等の管理と適正な溶接材料による『下盛り』溶接を行い、割れやブローホールなど欠陥のない補修溶接を行ってください。(㈱神戸製鋼所溶接カンパニー営業部カスタマーサポートセンター)金子和之藤沢0466―20―3000溶接110番溶接110番大阪06―6206―6400表1炭素当量と推奨予熱温度鋼種炭素当量(%)予熱温度(℃)炭素鋼・低合金鋼≦0.3≦0.4≦0.5≦0.6≦0.7≦0.8≧0.8≦100≧100≧150≧200≧250≧300≧350高MN鋼オーステナイト系ステンレス鋼高合金鋼予熱なし予熱なし≧400ショベルのつめの補修溶接建設機械のパワーショベルのつめの補修溶接の依頼がありました。溶接上の注意点について教えてください。(三重県M工業)図2トーチ角度(棒の傾斜角度)と狙い位置図1溶込み形状7


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