溶接110番

神戸製鋼所溶接事業部門発行の技術誌「技術がいど」。この中の「溶接110番」コーナーをまとめた電子カタログです。


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入熱およびパス間温度は、JISZ3001「溶接用語」で次のように定義されています。入熱は、「溶接の際、外部から溶接部に与えられる熱量。アーク溶接においては、アークが溶接ビードの単位長さ(1㎝)当たりに発生する電気エネルギーH(J/㎝)で表され、アーク電圧E(V)、アーク電流I(A)、溶接速度V(㎝/MIN)とすると、H=60EI/Vで与えられる。」とあります。従って、溶接電流・電圧が高いほど、また溶接速度が遅いほど入熱は大きくなります。いっぽう、パス間温度は、「多パス溶接において、次のパスの始められる前のパスの最低温度。1パス1層時のパス間温度を層間温度という。」とあります。比較的溶接長の短い場合の多パス溶接では、各パスごとに熱が蓄積されるため、次第に溶接部の温度が上がり、パス間温度は仕上げパス前で最も高くなります。もちろんその温度は入熱、溶接部の板厚、開先形状などにより異なります。鉄骨の柱梁仕口を想定したガスシールド溶接での溶接金属の機械的性質に及ぼす入熱、パス間温度の影響を図1に示します。入熱あるいはパス間温度が高くなると、溶接金属の冷却速度が小さくなるため、ミクロ組織が粗大化して強度および靭性が低下します。このような現象は各種溶接法について被覆アーク溶接からサブマージアーク溶接まで、軟鋼のみならず高張力鋼および低合金鋼溶接材料全般に起こります。特にガスシールドアーク溶接では、大入熱(高電流・低速度)の場合は、溶融池が大きくなるためシールド性が劣化して大気中の窒素が溶接金属に混入し、靭性がさらに低下する場合もあります。従って、所定の機械的性能を確保するには、入熱とパス間の管理をしなければなりません。JISZ3312「軟鋼および高張力鋼用マグ溶接ソリッドワイヤ」に新規制定された引張強さ540N/㎜2級高張力鋼用ソリッドワイヤYGW18,YGW19および既存のYGW11,YGW15は、鉄骨の柱梁仕口溶接に使用されるワイヤで、JISZ3312によると、柱―梁の適用鋼種に応じた溶接部の機械的性質を確保するため、入熱およびパス間温度を表1に示すように管理する必要があると記されています。神戸製鋼ではYGW18に規格該当する「MG―55」、YGW19に規格該当する「MIX―55S」を新たに開発しました。両ワイヤとも入熱40KJ/㎝、パス間温度350℃の上限でも優れた機械的性能が得られ、入熱量・パス間温度の管理が軽減できます。アークの安定性も良く一度お試しください。(㈱神戸製鋼所溶接カンパニー営業部技術サービス室)金子保藤沢0466―20―3000大阪06―6206―6400表1鉄骨造建築物におけるワイヤの使用区分溶接条件適用鋼種の引張強さ入熱(KJ/㎝)パス間温度(℃)400N/㎜2級490N/㎜2級520N/㎜2級15∼20≦150YGW―11,15,18,19YGW―11,15,18,19YGW―18,1915∼30≦25015∼40≦350YGW―18,19YGW―11,18:CO2ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤYGW―15,19:AR―CO2混合ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ(JISZ3312:1999)溶接鉄骨の柱梁仕口溶接の入熱およびパス間温度について110番建築基準法が改正されたことに伴い鉄骨ファブに対する工場認定制度も変わり、新しい制度による認定工場となる場合には、評価条件の中に、入熱、パス間温度などの溶接条件が決められているとのことですが、実際に入熱、パス間温度は、溶接性能にどのような影響があるのですか。(千葉県K鉄骨)(A)入熱の影響(パス間温度350℃)(B)パス間温度の影響(入熱40KJ/㎝)図1溶接金属の機械的性質に及ぼす入熱、パス間温度の影響(490N/㎜2級ワイヤ)11


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