溶接110番

神戸製鋼所溶接事業部門発行の技術誌「技術がいど」。この中の「溶接110番」コーナーをまとめた電子カタログです。


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ステンレス鋼のTIG裏波溶接では、裏波ビードが大気によって酸化されると健全なビードが形成できないため、アルゴンガス等でバックシールドを行って施工されています。バックシールドの方法としては、配管全体をシールドガスで置換する方法と治具を用いて溶接部のみを局部シールドする方法が用いられています。これに要する時間や使用するガス量は莫大なものとなります。このため、裏波溶接をバックシールドなしで経済的にかつ容易に行うことができ、しかも品質的に健全な溶接部の得られる溶接法が望まれていました。フラックス入りTIG溶加棒(TGXシリーズ)は、このような溶接施工者の要望にこたえるために開発されたものです。TGX溶加棒は、ワイヤに内臓されたフラックスがアークによって溶融すると適量のスラグを生成し、このスラグが表ビードとともに裏ビードを完全に覆い大気から保護します。従って、バックシールドを行わなくても酸化されることなく良好な裏波ビードが選られます。また、ビードを被覆したスラグは溶接後、容易にはく離し除去されるので美しいビード外観となります。TGX溶加棒を用いて鋼管のルートパスを溶接する時の施工要領は、基本的にはソリッドTIG棒を使用する場合と同様ですが、TGX特有の注意点があります。まず、健全な裏波ビードを確保するには、開先裏側へ溶融スラグを十分に供給する必要があります。そのためには溶接中のキーホールの形成が必須です。確実にキーホールを形成させるには、適正な開先条件(表1)と板厚に応じた溶接電流(表2)の設定が必要です。次に、溶加棒の送りは通常のソリッドTIG棒を使用する時と異なり、小刻みに早いピッチで行います。溶加棒を溶融プールに突込んで十分溶かしては離し、また突込んで溶かしては離すという操作を繰り返すことは同じですが、突込む溶加棒を一度に多くしすぎないように注意しなければなりません。あまり多量の溶加棒を突込みすぎると溶加棒が溶融できずに裏に突きぬけたり、フラックスが溶接金属中に溶け残るなどの溶接欠陥が発生することもあります。最後にTGXシリーズの製造メニューを表3に示します。(㈱神戸製鋼所溶接カンパニー営業部技術サービス室)蛸谷正敏表1適正な開先条件開先形状板厚(T)4㎜6㎜10㎜ルートギャップ(G)2.0㎜2.5㎜3.0㎜表2標準溶接電流板厚(㎜)3∼56∼910電流(AMP)80∼9090∼10590∼110表3銘柄棒端色サイズTGX‐308L赤色2.2Φ×1,000L㎜(包装単位:5㎏)TGX‐316L緑色TGX‐347青色TGX‐309L黄緑色溶接ステンレス鋼用フラックス入りTIG溶加棒(TGXシリーズ)について110番藤沢0466―20―3000大阪06―6206―6400ステンレス鋼管の溶接をTIG溶接で裏波ビードを出したいのですが、バックシールド不要のステンレス鋼用フラックス入りTIG溶加棒があると聞きました。溶加棒の特長と使用する上での注意点を教えてください。(神奈川県A鉄工所)図1キーホールの形成状況裏波ビード外観11


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