溶接110番


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1.鋼とは一般に鉄や鋼と呼ばれるものには多くの種類があり、それぞれの使用目的や含まれる合金元素によって、普通鋼、特殊鋼、鋳鋼、鍛鋼、鋳鉄に分類されます。さらにこれらの鋼はいずれもJISによる分類とは別に、入っている炭素の量によっても低炭素、中炭素、高炭素と区分されます。2.中・高炭素鋼の溶接特に質問の多いのが「S45C」です。特殊鋼に分類され、機械構造用炭素鋼材で歯車やシャフトによく用いられています。「S45C」の45という数字は炭素量を表すものです。炭素量が0.45%も多量に含有されていると、その焼入れ硬化性は大きく、溶接施工時における急熱、急冷の熱サイクルによって溶接熱影響部が著しく硬くなるため、溶接部の伸びが少なくなり、溶接割れなどの欠陥を生じ易くなります。したがって、これらを軽減するための処置が必要になります。一般には鋼の各種合金元素の影響を炭素の効果に換算した値である炭素当量を求めて、硬さがどの程度になるのか推測し、予熱や溶接条件を設定します。(表1)炭素当量(CAQ)の計算式は種々の方法がありますが一般的には次式がよく使われています。CAQ=C+1/6MN+1/24SI3.溶接材料の選択中・高炭素鋼の溶接で母材と同様の性能を持つ、溶接材料はありません。したがって、材料の選択は母材にできるだけ近い引張り強さで接合する接合と、単に接合する場合の2通りの選択があります。いずれにしても、炭素当量の高い鋼材は熱影響部に割れが生じやすく、割れは熱影響部の硬化と熱影響部内の水素量、拘束条件などが原因して発生します。熱影響部への水素の拡散を減らすには低水素棒や極低水素棒のような水素量の少ない溶接材料を選択するか、あるいは金属組織的に水素の拡散しないオーステナイト系の溶接棒を用いることにより、割れ発生を防止させることができます。(表2)4.予熱と後熱予熱は溶接前に母材を加熱することにより、溶接部の冷却速度を遅くして、熱影響部の硬化や割れの発生を防ぐ目的で行います。一方、後熱は溶接直後に溶接部を再び加熱するもので、残留応力の緩和、熱影響部の硬化、水素の放出を促進して割れを防ぐことを目的として行います。最後に「S45C」の溶接で重要なことは、単に接合するのか、強度が必要なのかを選択し、その上で、耐割れ性を考え低水素系の溶接棒の使用と溶接棒の乾燥、および板厚などを考慮して予熱、後熱を確実に行うことが重要です。今回は紙面の都合により被覆アーク溶接材料を紹介いたしましたが、機会がありましたらMAG溶接材料について紹介したいと思います。(㈱神戸製鋼所溶接事業部販売部技術サービス室)山本岩王鋼種炭素当量(%)予想温度(℃)炭素鋼・低合金鋼≦0.3≦0.3≦0.5(S45C)≦0.6≦0.7≦0.8≦0.8≦100≧100≧150≧200≧250≧300≧350炭素当量※1溶接の易しさ母材と同じ性能を要求する場合母材に近い引張り強さを望む場合単に接合する場合推奨銘柄推奨温度推奨銘柄推奨温度0.59(S45C)△なしLB-62LB-116予熱150℃∼200℃(後熱650℃)LB-26予熱150℃∼200℃後熱650℃NC-39予熱は若干することが望ましいが場合によっては省略も可、後熱はしない。藤沢0466―20―3000溶接110番大阪06―206―6400「中・高炭素鋼の溶接」中・高炭素鋼の溶接については、既にいく度かこの溶接110番でもとり挙げ掲載してきましたが、今でもその種の問い合わせが多くあります。そこで、中・高炭素鋼の基礎および溶接の一般的な注意事項を説明させていただきます。表2溶材棒の選び方の一例表1炭素当量と標準的な予熱温度13


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